あのね、聞いて。
病院の話なんだけど。
ずっと、透析で近所のベッドのおばちゃんがいて。
僕によく食べ物をくれるおばちゃんで。
僕は完全に餌付けされているわけだけども。
最近ずっと見かけなかった。
ベッド表を何度も見て、入院患者のところにもいない。
そのうち帰ってくるかな。
なんてこと考えてたけど、ずっと帰ってこない。
腰の手術をした隣のおじちゃんが帰ってきても、帰ってこない。
そのうち、そのベッドで誰かが透析したりして。
あぁ、そういうことか。
と、覚悟を決めた。
そうだよ。
いつどうなるかわからない命。
突然こなくなって。
それから会うこともない。
そんな患者さんは山ほどいる。
SNSでもそう。
若いのに突然亡くなったり。
そんな方も見かける。
だけど聞けないでいて。
でも、心の中では覚悟を決めていて。
今日もベッド表を見て。
あぁ、いないんだな。
と思って。
自分のベッドまで歩いていると。
途中になんかいた。
は？
って思った。
よかった。
生きてた。
大腿骨を骨折して、別の病院で手術して。
そしてまたこちらに帰ってきたらしい。
よかった。
覚悟したもんね。
お別れも言えないのかと思って。
だけどそれが僕たちだから。
仕方がないと思っていた。
よかった。
本当によかった。
聞いてくれてありがとう。
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